イオン【8267】は「買い」なのか。株価や業績、配当金、株主優待などから考える

イオン【8267】は大手流通グループ「イオングループ」を統括する純粋持株会社です。

営業収益は8兆円を超え、小売業としては日本一の規模を誇ります(2位はセブン&アイ・ホールディングス)。

イオンやマックスバリュ、ミニストップ、ウェルシアなどのイメージが強い企業ですが、利益規模ではイオンフィナンシャルサービスなどが担う総合金融事業と、イオンモールなどが担うディベロッパー事業がツートップとなっています。

人によっては株主優待がかなりお得なようなので、投資対象としてどうなのか検討してみることにしました。

業績・年間配当・配当性向の推移

営業収益
(億円)
営業利益
(億円)
年間配当
(円/株)
配当性向
’09/2 52307 1243 17
’10/2 50543 1301 20 49.2%
’11/2 50965 1723 21 26.9%
’12/2 52061 1956 23 26.4%
’13/2 56853 1906 24 25.1%
’14/2 63951 1714 26 46.5%
’15/2 70785 1413 28 55.8%
’16/2 81767 1769 28 389.4%
’17/2 82101 1847 30 223.2%
’18/2 83900 2102 30 102.6%
’19/2
(予)
87000 2400 34 81.6%

売上(営業収益)、営業利益ともに上下ありながらも伸ばしてきていて、今期も増収増益で着地予定のようです。

配当金も連続増配とまではいかないものの、減配することなく維持あるいは増配を繰り返してきています(確認できた範囲では29年間減配なし)。

一方で配当性向を見ると2016年2月期以降は100%を超えた期もあり、いわゆるタコ足配当気味になっています。

その大きな理由は、配当の原資である「親会社株主に帰属する当期純利益(以後、親会社当期利益)」が伸び悩んでいるからです。

営業利益が好調なのに親会社当期利益が伸び悩む理由

その理由は、持分比率の高い企業が含まれるGMS事業がイマイチだったからです。

これを理解するためには、まずセグメント別の業績を見ていく必要があります。

セグメント別の営業利益↓

※各期の決算資料から数字を拾いましたが、セグメントの組み換えがあるので必ずしも各期で対応しているとは限りません。雰囲気をつかむ程度に利用してください。

表を見ると分かるように、営業利益が伸びているのはドラッグ・ファーマシー、総合金融、ディベロッパーが中心です。

しかし、これらのセグメントに属する子会社はイオンの持分比率が比較的低いため、営業利益を伸ばしたとしても最終的な親会社当期利益があまり伸びないのです。

上記3セグメントの主力企業におけるイオンの持分比率は以下の通りです(調査時点)。

  • ウエルシアホールディングス(ドラッグ・ファーマシー)…50.53%
  • イオンフィナンシャルサービス(総合金融)…44.86%
  • イオンモール(ディベロッパー)…55.18%

いずれも50%前後ですので、仮に100の営業利益を出せたとしても、そのうちの半分程度しかイオンの取り分にはなりません。

一方、GMS(総合スーパー)セグメントのイオンリテールの持分比率は100%、イオン北海道は80.47%と高い水準にあります。

つまり、例えば総合金融で営業利益が100伸びてGMSで営業利益が100落ちた場合、営業利益でみれば±0ですが、親会社利益で見るとマイナスになってしまうのです。

かつての主力であったGMSセグメント(高持分比率)がここ数年は不調だったことで、親会社利益が伸び悩んでいたというわけです。

とはいえ、たとえ総合金融やディベロッパーセグメント企業の持分比率が低くとも、そこで営業利益が伸びてくれれば一応は親会社利益も伸びます。

そのおかげで2016年2月期を底にして親会社利益は回復傾向にあり、同時に配当性向も低下してきています。

今後、GMSセグメントが完全復活となれば、親会社利益が大きく回復する可能性は十分にあるでしょう。

直近の決算(2019年2月期3Q)

3Qまでの状況を見る限り、前期比プラスで推移しているようです。GMSもプラスになっています。

ただし、月次連結営業概況を見ると、12月、1月とあまり芳しくなさそうな気配もあるので、最終的な着地を見るまでは油断できなさそうです。

配当と株主優待について

配当

イオンの権利確定日は2月末と8月末の年2回です。

目先では、

  • 2019年8月28日
  • 2020年2月25日

が権利付最終日(その日に株を持っていれば権利が貰える日)となっています。

配当金の支払日は中間配当が10月下旬頃、期末配当が4月下旬から5月上旬頃です。

有価証券報告書(2018年2月期)の配当政策には、

1株当たり年間配当金につきましては、前年以上を維持しつつ、連結配当性向30%を目標として定め、さらなる利益成長ならびに株主還元に努めていきます。

と書かれており、基本的に減配はしないというスタンスが明記されています。

株主優待

イオンの株主優待は、まずは何と言っても株主ご優待カード(オーナーズカード)です。

イオン系店舗での買物の際に提示することで、持株数に応じた返金率での返金を受けることができます。

  • 100~499株…3%
  • 500~999株…4%
  • 1000株~2999株…5%
  • 3000株以上…7%

例えば毎月10万円を対象店舗で使っているとするなら半年で60万円の買い物ですから、半年で60万円×3%=18,000円、1年で36,000円の返金を受けられることになります。

株価2,400円の時に100株を購入していたとすると購入代金は24万円です。

この前提で利回りを計算すると、3.6万円÷24万円=15%・・・これはかなりイイ感じな優待利回りではないでしょうか。

株価2400円の時にイオン株を購入したという前提で、保有株数と買物額のパターンを適当に考えて表にまとめてみました。

やっつけ仕事でちょっと見づらいですが、要するに「100株購入で3%返金の権利を取得し、できるだけ上限額(半年で100万円)に近い買い物をすることで利回りは20%を超えることもある」ということです。

上記の前提でいけば、月3万円の買物であっても4.5%の利回りとなりますからだいぶお得に感じられます。

月3万円くらいなら食費だけでもいく家庭はあるかと思います。

逆に、大量のイオン株を購入して返金率を上げたとしても、購入代金がその分膨らんでしまうため利回りは低下します。

利回りを最大化したいなら100株購入がベストです。

また、イオンイーハートやイオンシネマなどを利用した際には会計時割引あるいは優待料金特典を受けることができます。

この場合、キャッシュバックは受けられませんが、イオンイーハートの店舗(四六時中、SHIROKU、グルメドール、和ぐるめ、ボンディア、麦の香、海の穂まれ カフェ・ド・ペラゴロ)では10%割引になります。

イオンシネマでは映画の鑑賞料金が1,000円(中学生以下は800円)になるので、返金率3%に比べると遥かにお得です。

さらに、このオーナーズカードを持っていれば、イオンモールなどにあるイオンラウンジも利用することができます。

イオンラウンジではくつろぎながらイオンの飲み物や食べ物が無料で飲食できるようです(私は入ったことはありません)。

様々な特典の付いたオーナーズカードですが、まずは100株を買ったと仮定して、日ごろの買物額から返金率(返金額)、そして利回りを算出してみて、「欲しい!」と思えるかどうか考えてみてください。

そしてオーナーズカードを手に入れることになったら、返金以外の部分についても使い倒すのが有効活用方法としてはオススメです。

株価の推移

過去30年間の株価推移はこんな感じです↓

見ての通り、最近の株価は回復傾向にあります。

ただし、12月の世界的な株安に伴う急落分はまだ回復できていません。

イオンは「買い」なのか

もしイオン株が欲しいとしたら今は買い時なのでしょうか。

12月の急落以降、まだ株価が回復しきっていないというのは少々遅い気もします。

業績が回復基調であるとするならば、2月の権利落ちで一時的に株価が下がるとしても、再び高値を目指して上昇していくのではないかと思います。

PER等の指標は、人気の優待銘柄であることを考えるとあまり参考になりません。

優待の廃止は考えづらいですし、イオンが営業を続けている限りはオーナーズカードの恩恵を受け続けることができるでしょう。

権利確定日前の高値に飛びつくのはNGとしても、地合いが悪いタイミングなど、適当に下げた時に買っておけば「大間違い」にはならないと思います。

売買の履歴

ありません。

私の場合、イオンの配当利回りだけでは手が出せませんし、イオン系の店舗が近所にあるわけでもないため株主優待の恩恵を十分に受けるのは難しそうでした。

とはいえ、イオン系のお店をよく使う人にとってはメリットの大きい優待があるのも事実です。

イオンのヘビーユーザーなら入手必須と思えるくらいの株主優待でしたので、人気があるのも頷けます。

私がもしイオンのヘビーユーザーだったら確実に買っていたでしょうね。

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